2012年4月21日(土) に代官山ヒルサイドテラスにて開催致しました、素材色彩研究会MATECO設立記念レクチャー、【十人素色-決定の論理】。
ご登壇頂きました10組のレクチャラーの方々の『決定の論理』がどのようなものであったか、これから10回に分けてMATECO運営メンバーがレポートしていきます。
ご登壇頂きました10組のレクチャラーの方々の『決定の論理』がどのようなものであったか、これから10回に分けてMATECO運営メンバーがレポートしていきます。
本日よりご登壇頂いた順にUPしていきますので、当日会場に来られなかった方、またお越し下さった皆様には再び、当日発せられたエネルギーと決定の論理の多様さ、そして改めて素材と色彩が持つ可能性を感じ取って頂ければ幸いです。
2012年6月4日(月) MATECO代表 加藤幸枝・田村柚香里
MATECOレポート 【十人素色-決定の論理 その1】
Vol.01 「照明の決定の論理」 岡安泉照明設計事務所 岡安泉氏
Vol.01 「照明の決定の論理」 岡安泉照明設計事務所 岡安泉氏
私事ではあるが、実は1番気になっていたのがこの「照明」のセッションだった。昨年、GSDy主催で色彩計画家の加藤さん・マテリアルコーディネーターの田村さん(共に現MATECO代表)をお招きし、講演をして頂いた際に実現できなかった残りのワンピースが「照明」だったからである。
「素材・色彩・照明」は、「建築」「土木」「ランドスケープ」といった具体的に空間にアウトラインを与えていくレイヤーとは異なり、その立ち上がってきたアウトラインに対して「味」「雰囲気」を創りだすレイヤーではないかと考えている。料理に例えれば「材料」と「調味料」のような関係で、「調味料」なくして美味しい料理はできないといったところだろうか。
前置きが長くなったが「十人素色」当日、岡安さんからはジュリアナ東京を改修してHAKUHODOのオフィスに転用したプロジェクト(吉村靖孝建築設計事務所と共働)、2人の若手建築家(谷尻誠氏/平田晃久氏)とのコラボレーションによるミラノサローネでの2つのインスタレーションのプロジェクトの紹介があった。今回の講演では、その最新の3つのプロジェクトを通じて照明の決定論理をあぶり出そうとされていた。
この3つのプロジェクト紹介から決定の論理をどのようにあぶり出そうとされたのかを順にレポートする。
1. HAKUHODOのプロジェクト
このプロジェクトでは、窓のない空間でいかに快適に過ごせるかを目標とし、サーカディアンリズムを取り入れた照明計画をしている。ここでは、照明ボックス下面のガラスが幅1.3m×スパン11mといった梁に取り付くことで巨大な板材となり、ガラス厚が22〜24mmとなることで「緑色」のガラスになってしまい、照明による演出色が全て緑がかったものになってしまうという技術的な課題があった。
その課題を反射板に薄くピンク色を入れて補正することで解決したということだった。
その課題を反射板に薄くピンク色を入れて補正することで解決したということだった。
結果、照度は350luxとなり、オフィスとしてはやや低い数値であるが、低い色温度の中ではあまり照度が高いと生活しづらいという人間の感覚的な問題があることから、スタンドなどの補助照明を用いることで解決できる、という解説が加えられた。
2. Miranosalone2012 インスタレーション1
谷尻誠氏とのインスタレーションは、アクリルの破材の価値観を変えるというコンセプトに基づき参加型インスタレーションで行われたものであった。破材のアクリルを水盤に浮かべ、水盤の境界面を全反射面として水の中をLEDで光を反射させ、アクリルが水盤の境界面に触れた瞬間にボワッと光るといった仕組みをつくられたというお話であった。
3.Miranosalone2012 インスタレーション2
平田晃久氏とのインスタレーションでは、日中から日没までの間をバランスよく太陽光発電できる4枚の太陽光パネルとポリカーボのストラクチャーで1ユニット化された全16ユニット、合計25kgの単純な構造物のライトアップとその周囲を取り囲む展示空間の回廊の照明を手掛けられたということであった。
ここでは照明プログラミングという方法論ではなく、人が歩き回ることで構造物に映込む光の変化を楽しめるように演出し、愛着を持ってもらうことを意図したとのことであった。また、回廊の照明ではLEDの特性を活かしたバルーン照明を手掛けられ、熱を発しないLEDの誕生により照明と組み合わせることのできる素材の幅が広がったということであった。
岡安さんの口から、「決定の論理はこれだ」というまとめはなかった。しかし、3つのプロジェクト紹介から、決定の論理は「課題解決に基づいていること」「標準的な必要照度(lux)にこだわり過ぎないこと」「LEDの登場で決定の論理の幅が広がったということ」の3つがあるのではないかと感じられた。
また、この原稿を執筆するにあたって岡安さんの一連の仕事をHPで拝見させて頂き、コラボレーションする人・モノによって柔軟にその決定論理を変えていらっしゃるのではないかと感じられた。
いずれにしても、今回は10分という限られた時間の中でお話をして頂いたのではっきりと見えてこなかった部分もあったのではないかと思う。また別の機会にじっくりとお話を伺える機会を持てればと思う。
●レクチャラープロフィール
岡安泉 / IZUMI OKAYASU
1972年生まれ。1994年、日本大学農獣医学部を卒業し、生物系特定産業技術研究推進機構に勤務。1999年、アイティーエルに入社、照明技術に携わる。2003年、super robotに参加。2005 年にismi design officeを設立。
2007年に岡安泉照明設計事務所に改称。主な仕事に、ルイ・ヴィトン京都大丸店のファサード、美容室「afloat-f」(設計:永山祐子建築設計)や隈研吾建築設計事務所「casa umbrella」(ミラノトリエンナーレ2008)の展示照明、反射鏡付きハロゲンランプ、ピンホールダウンライトはじめ照明・展示用器具のプロダクトなど。
●レポート執筆担当
岡田 裕司 / OKADA YUJI
1987年、埼玉県生まれ。2012年早稲田大学大学院(景観・デザイン専攻)を修了し、同年4月より株式会社オリエンタルコンサルタンツ都市地域創生事業部門都市デザイン部にて公共空間のデザインや計画に従事。
学生時代は国内外のデザインコンペやWSに参加する傍ら、GROUNDSCAPE DESIGN youth代表(2010-2012)として「風景」をキーワードにして様々なイベントを企画・運営し、広く社会に対して情報発信を行う。
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