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2012年8月1日水曜日

MATECOレポート 【素材と色彩のTA‐MATECO箱(後編)】

MATECOレポート第十二弾は、TA-MATECO箱の後編です。

421日に開催致しました『十人素色-決定の論理-』では、ご登壇いただいた10組のレクチャラーの皆さんに素材と色彩をご持参頂きました。

展示の方法を考えた結果、小さな桐の箱を用意し、その中にこれまでに手がけられたプロジェクトやご自身の専門分野に欠かせない『素材と色彩』を詰めて頂くこととしました。
 
た・まてこ・はこ玉手小箱、といささかダジャレ混じりではありますが、大真面目に、素材と色彩の多様な魅力を伝えたい、そして様々な決定の方法論・論理を視覚的な情報として ストックしていきたい、という思いから生み出された展示の方法であり、あえて箱に共通のモジュールを用いることにより、中身を一層際立たせることができる のでは、と考えました。

当日会場では多くの方が手に取られていました。素材と色彩のリアルさ、そして豊かさを体感して頂ける展示になったと思います。
以下、各レクチャラーの方々のレポートと同様、ご登壇頂いた順に後半5組の方のMATECO箱をご紹介します。

前半5組の方のTA-MATECOも是非併せてご覧下さい。 


北川一成 / ISSAY KITAGAWA
例えば、いろんな紙に、同じ色のインキを同じ条件で印刷していきますと、
同じ白色に見える白い紙でも、紙の種類が異なれば色は全部違ってきます。
そして、その色は、置かれる環境や時間の経過によって変化していきます。
表したい色を追求するには常にこれらを考慮しておかなければなりません。
そういうことを頭で解っていても実際の現場で判断できなければダメです。
これは経験とその数により、ますます実感し、培われていくものでしょう。
→北川氏のレクチャーの様子はこちら



■流麻二果 / MANIKA NAGARE  屑玉手
絵描きである私から生まれる色はいつも絵具から放たれる。
光を得て作品となる。
そしてアトリエにはその屑が残る。
屑もまた鮮やかに物語る。
→流氏のレクチャーの様子はこちら 



■403architecture〔dajiba〕 素材の箱
桐の箱の表面を削り、その木くずを元の箱に入れている。
箱を構成する板の厚みは薄く滑らかになり、
薄くなった分の細かな桐の粉を箱の内部に移動させた。
桐の箱に内在していた素材の可能性を用いることで、
箱そのものと箱の中身を同時に制作している。
→403architecture〔dajiba〕のレクチャーの様子はこちら 



■熊谷玄 / GEN KUMAGAI
この箱に詰め込んだのは、3年前ぼくが独立してから頂いた
仕事の現場を収めた現場写真の数々です。
仕事の依頼が来ると、まず現場に出かけます。
そこは、開発されたまっさらな更地だったり、役目を終えて建て替えられる建物だったり、営業を続けているショッピングセンターだったり、砂漠だったり、森だったりしますが、そこにある空気とか太陽とかそういったものが、その場の色を生み出していて、それは何というか計画の前提のようなものとして常に意識するようになります。こうしてこれまで取り溜めた現場写真を改めて並べてみると何か見える気がして今回、この箱に詰めてみました。
仕事を通して様々な場所を訪れその場所の色を記憶する。
その蓄積が僕の色を作っているのかもしれません。
→熊谷氏のレクチャーの様子はこちら 



■川添善行 / YOSHIYUKI KAWAZOE
コクタン/サクラ/カツラ/ホオ/
アクリル/アルミニウム/スズ/カシ/チーク
(この3センチ角のキューブは川添氏のデスクに置かれているものなのだそうです。)
→川添氏のレクチャーの様子はこちら


如何でしたでしょうか。
分野は違えど、決定という行為における論理を裏付けとなり得る、素材と色彩の数々。
どうか改めてレクチャーのレポートと併せて、ご堪能下さい。

今回、ご登壇者の方々に制作していただいたTA-MATECO箱は事務局にて大切に保管してあります。来年の十人素色の際には新たな箱と共に展示させて頂きたいと考えています。順調に行けば、10年後には100個の箱が集まることになります。
そうした時間の経過が、箱に、そして中身にどのような影響を与えるのか…。単に物理的な意味だけでなく、色褪せない素材と色彩とは?あるいは、時代を彩る素材・色彩。
時間がつくる・育てる、という観点も、MATECOの重要なテーマです。

2012年6月29日金曜日

MATECOレポート 【素材と色彩のTA‐MATECO箱】

4月21日に開催致しました『十人素色-決定の論理-』では、ご登壇いただいた10組のレクチャラーの皆さんに素材と色彩をご持参頂きました。

展示の方法を考えた結果、小さな桐の箱を用意し、その中にこれまでに手がけられたプロジェクトやご自身の専門分野に欠かせない『素材と色彩』を詰めて頂くこととしました。

た・まてこ・はこ→玉手小箱、といささかダジャレ混じりではありますが、大真面目に、素材と色彩の多様な魅力を伝えたい、そして様々な決定の方法論・論理を視覚的な情報として ストックしていきたい、という思いから生み出された展示の方法であり、あえて箱に共通のモジュールを用いることにより、中身を一層際立たせることができる のでは、と考えました。

当日会場では多くの方が手に取られていました。素材と色彩のリアルさ、そして豊かさを体感して頂ける展示になったと思います。
以下、レポートと同様、ご登壇頂いた順に前半5組の方のMATECO箱をご紹介します。


岡安泉 / IZUMI OKAYASU
照明の主流がLEDに変わりつつあります。
それは組み合わせる素材の自由度が高まったことでもあります。
アクリルだったり、布だったり、紙だったり。光の制御もレンズによって容易なものになりました。
照明の環境は、これから大きく変動します。
→岡安氏のレクチャーの様子はこちら




八島紀明 / TOSHIAKI YASHIMA
サイン計画の大きな特徴は、ミリ単位の文字から10 数メートル単位に至る、大小の色彩や素材、文字を扱うことにあります。また、建築建材から紙媒体、デジタル媒体に至るまで、多種多様な素材や媒体を用い、それらのことに知悉・精通していることが求められます。
近年では防火対策や経済状況の問題もあり、人工的な建材を用いることを要求されることが多くなりました。
箱の中身を見ていただくとその傾向が理解いただけると思います。
→八島氏のレクチャーの様子はこちら



崎谷浩一郎 / KOICHIRO SAKITANI 
『解は現場にある』 ※解と貝、が“かかって”います
→崎谷氏のレクチャーの様子はこちら



田村柚香里 / YUKARI TAMURA
素材と素材をつなぐ欠かせない「名脇役」
MATECO箱に何をつめようか
「せっ器」「磁器」 「施釉」「無釉」
「好きな色」「お気に入りのテクスチャー」
「原料」「試作段階のテストピース」
あれでもない、これでもない・・・
たくさんのモノの中から絞り込んで、最後に残った大事なモノ
ぴったり決まると心地いい
 素材と素材をつなぐ「目地」
→田村氏のレクチャーの様子はこちら



小川重雄 / SHIGEO OGAWA
和歌浦アートキューブ(下吹越武人さん設計)のガラス
ファサードの内側には、銅板で被覆された可動ルーバーがある。
ジグザグに設置されたガラスには周辺の松林が映り込み、銅板と不思議なレイヤーを形成する。
その状況を捉えた写真を万華鏡のように設え、遊んでみようと思った。
銅板、ガラス、松林、青空、白い雲。最後のレイヤーは実体であるアクリルキューブ。
この桐箱の中で自由に動かして楽しんでほしい。
→小川氏のレクチャーの様子はこちら




いかがでしたでしょうか。
決定の論理を裏付けるような、素材と色彩の数々。どうか改めてレクチャーのレポートと併せて、ご堪能下さい。

引き続き、後半5組の方のレポートを順次公開していきます。どうぞお楽しみに。

2012年6月17日日曜日

MATECOレポート 【十人素色-決定の論理 その5】

MATECOレポート第五弾は、『十人素色-決定の論理-』にご登壇頂いた建築写真家・小川重雄氏のレクチャーについて、です。
まちを・建築を見るという行為そのものとも言える小川氏の写真は、私たちに対象を見る・見極めることの大切さや意味を提示して下さったように思います。見極めるためには経験がものを言い、けれども二度と同じ瞬間は訪れないという矛盾があり、瞬間を切り取ったものであるにも係わらず、そこには膨大な“時間”が刻み込まれている、と感じました。

私見で恐縮ですが、写真や建築について終始少年のように目を輝かせてお話して下さった様子が大変印象に残っています。誰に対しても大変気さくで、運営にあたった私たちスタッフにも積極的に声を掛けて下さいました。 挙句、気がつけばなんと会場の後片づけを手伝う姿をお見かけし大慌て…、という一幕もありました。

参加者からは『いつか小川さんに自分が設計した建物の写真を撮ってもらいたい』という声も聞かれ、お仕事の素晴らしさも然ることながら、それが氏のお人柄に裏打ちされたものであることにもすっかり魅了されてしまいました。

ポートその1その2その3その4とも併せて、ご高覧頂ければ幸いです。

2012年6月10日 MATECO代表 加藤幸枝


Vol.05 「写真の神様がシャッターを押せ、という瞬間を待つ」 小川重雄氏
 
建築写真家の小川重雄さんのレクチャーは息をのむような美しい写真の連続でした。和歌の浦アートキューブでは、銅板で被覆された可動ルーバーと空・雲・木が映り込んだガラスに光が加わり、それだけで屏風のように美しい状況がつくりだされていました。

ねぶたの家ワ・ラッセでは、赤い鉄板がより輝いて見える夕日の瞬間や、フォンタナの作品のようにひねり仕上げの鉄板を光がなめる絶妙なタイミングが選択され、聖ベネディクト教会では、木片が雨にぬれて黒ずんだり日が照って明るい茶に戻ったりと天候で見え方変わる様子や、つや消しシルバーに塗装された壁と柱の間をハイサイドライトだけで取り入れた光が通り、柱が浮いて見える様子が見事に写し撮られていました。 

小川さん曰く、写真を決定づけるのは光であり、写真家の仕事とは建築がもっているものの素材に光が加わりその瞬間にしか見えないシーン、まるで神様が横に来て「今シャッターを切りなさい」とでも言っているかのように現れる千載一遇の素晴らしい光の状況を選ぶことなのだそうです。
用意された10枚きっかりのスライドに小川さんの美しい光のシーンを見極めようとする写真に対する真摯な姿勢を感じました。

最近のカメラは性能がよくなり誰でもそれなりにうまい写真を撮ることが可能になり、後で修正もできてしまうので、そこにはフィルムカメラでシャッターを切るときのような緊張感はなく、私はそんな文明の力に甘んじてついつい適当にシャッターを押しがちです。

写真を撮るという行為は自分なりのものの見方を示し、それを鍛える道具であるとも思いますが、小川さんの美しい写真を見せていただき、自分は写真を撮ることでどれだけ審美眼を養えているのかと振り返るきっかけとなりましたし、さらには色や素材がもっと美しく輝く瞬間を自分の目でも見てみたいという気持ちになりました。

建築などの変化しないものに光などの変化する自然現象が加わって作り出される最高の瞬間は、日々の鍛錬によって磨かれた審美眼により決定づけられるのだと感じています。小川さん、貴重なお写真を見せていただき本当にありがとうございました。


●レクチャラー紹介
小川重雄 / SHIGEO OGAWA
1958 東京生まれ
1980 日本大学藝術学部写真学科卒業
1986 株式会社新建築社入社、1991年より写真部長
2008 小川重雄写真事務所設立、現在に至る
2011 岩見沢複合駅舎の写真展 『パースペクティブ・アーキテクチュア』開催。国内外の建築を撮影、雑誌やWebで写真を発表している

●レポート執筆担当          
中村麻子 / ASAKO NAKAMURA
1988年生まれ。多摩美術大学 美術学部 環境デザイン学科 建築専攻4年 
建築を中心にインテリアデザインからランドスケープデザインまで、様々な視点から環境デザインを学ぶ。すいどーばた美術学院建築科出身。
幼い頃からの色彩への強い関心と、生まれ育った新宿の景観を良くしたいという思いから環境色彩に興味をもち、中学2年時での色彩検定3級取得以来、現在も色彩関連の資格取得に向けて勉強中。
主な参加したワークショップやプロジェクトに、産学官共同えどがわ伝統工芸プロジェクト2009AAschool workshop 2010Landscape Design Student Exhibision 2010 、横浜ハーバーシティスタディーズ201120124月よりGSDy会員。