2012年3月4日日曜日

MATECO、始まりました。

この度、環境を取り巻く様々な分野に係わる素材・色彩のあれこれについて考える会を立ち上げました。以下、【MATECO】の設立趣旨です。これから様々な発信を行って行きますので、どうぞ宜しくお願い致します。

設立趣旨

2004年(平成16年)に策定された景観法の策定以後、専門家のみならず景観に対する意識の高まりは活発になり、各地でまちづくりと連動した景観に対する取り組みも益々盛んである。また、2011年のUIA世界大会東京等で取り上げられたように(誰が景観を創るのか?~筋書きの無い物語)、これからの縮退社会において景観がどのようにあるべきか、あるいはどのように創造していくべきかという議論が各地で聞かれるようになったが、地域ごとの課題や生かすべき資源は様々であり、一律に法に従えば良質な景観整備が叶う訳ではないということは自明である。

法律はあくまで『著しく景観を阻害する要因を取り除く』ためのネガティブ・チェックであり、創造的で良好な景観を形成していくためには新しい時代にふさわしいコンテクスチュアリズムを構築し、課題を解いて行くための方法論が求められている。その一方、一つの方法論が別の地域には当てはまらない点が景観形成の最も難しい部分であり、各分野における真摯で地道な取り組みが必要とされている。

その取り組みの一縷を担う視覚的要素である素材・色彩は、アーバンデザインや建築等の専門教育において未だ積極的に扱われておらず、外装仕上げ材は単なる表層、色彩は単体としての美しさや個性を表現するため、限定された環境下でのコーディネートの域に留まっているのが現状である。

未来の景観を担うArchitect(建築家・アーバンデザイナー・ランドスケープデザイナー等)のタマゴ達が、素材や色彩に関する十分な知識を持たないまま実務にあたらねばならない現状は兼ねてより危惧してきた実情であり、特に若い世代に向けて有益な情報の発信と議論の場を提供することが必要だと考えている。

私たちは長く様々な実務に係わってきた経験から、素材や色彩は単に外観の保護や美観を保つ表層としてだけではなく、まちなみの調和や適度な連続性・地域の“らしさ”に対し多大な影響を持ち、景観を構成する重要な要素であると考えている。また建築設計における空間構成やフォルムの生成において、素材や色から立ち上がるボリュームという考え方もあるはずであり、素材や色彩で解決出来ることの限界を十分に把握しつつ、その無限の可能性についても大きな期待を抱いていることも事実である。

更に、例えばタイルという素材は日本の土を使い・日本の工場で・日本の職人が長く製造に携わってきたという歴史を持っている。そうした素材の持つ歴史(=文化)をより深く学ぶことにより、日本の産業を支える役割としてのアーキテクトの意義を見出して行くことについても考えて行きたい。

今一度、日本が長く培ってきた『その地にある材料で建築・工作物をつくってきた』という地域特有の景観の歴史を見直し、そこから地域の未来の景観を考えてみると共に、新しい技術によって開発された素材の特性や色彩の機能的・心理的・生理学的側面からも快適な環境や空間形成の可能性を考えて行きたい。

同時に、基本的な色彩調和の理論等を活用することによって、とかく嗜好や感性の範疇として捉えられる素材・色彩の選定を、広く共有されるべき理論に基づき行うことが出来るよう、様々な情報や技術の普及・啓発活動及び教育に努めていくことを目指す。

2012年2月吉日

0 件のコメント:

コメントを投稿