2012年11月13日火曜日

タイル工場見学会・レポート公開のお知らせ


2012年6月23日・24日に実施致しましたタイル工場見学会のレポートが完成しました。

タイルという素材の魅力から、分類に関する基礎知識、4つの工場の特徴や製法紹介、見学会参加者の感想…と、一冊でタイルの概要を知ることが出来るレポートです。
是非ご高覧下さい。

タイル工場見学レポート(PDF形式・2.13MB

見学会参加募集のフライヤーに続き、メンバーの伊藤祐基さんが素敵な表紙をデザインしてくれました。

素材の産地を見てきた後、次にどのように設計し施工にはどのような技術や知識が必要なのか、ということをもっと知りたいという参加者の要望から、去る11月2日に第二回勉強会『素材が立ち上がるまで-日本のタイル 生産・設計・施工の現場から』を開催しました。

ご参加下さいました皆様、本当にありがとうございました。

ゲストレクチャラーとしてお招きした建築家・蘆田暢人氏には年代毎の目地の扱い方の変遷という新しい見方、建築の哲学を徹底することの意味など素材から建築を語って頂きましたが、それは結局建築の本質につながっていくことなのだと実感しました。

タイルという何処の国にもある素材、その技術は拡がりを持つがモノの質は地域に根づく、というお話はまちなみ形成の新しい可能性へと発展。それはまさにMATECOが考えている、素材・色彩と全体の構築の往き来の意味や意義を示すものでした。

MATECO代表田村と不二窯業株式会社清水真人氏、田中信之氏にご紹介頂いた施工技術もまた、年代毎にどのように発展してきたかという変遷を知り、素材を扱うことの難しさや面白さに益々興味が湧いてきました。

技術と素材、安全性と施工性。不二窯業さんには接着剤など副資材まで沢山の現物を持って来て頂き、見て・触れて・体感する、を目指す勉強会として、大変濃密な三時間半となりました。

この勉強会の詳細は追ってテキストに整理し、本blogで公開させて頂きます。
もうしばらくお待ち下さい。

一度の見学会・勉強会でタイルは終わり、ではもちろんなく。今後も機会ある毎に、タイルをはじめとする様々な素材の成り立ちについての見識を深めて行きたいと思います。
次の見学会・勉強会にも是非ご期待下さい。

2012年11月13日
MATECO代表 加藤幸枝・田村柚香里



2012年10月29日月曜日

【MATECOレポート】 タイル工場見学会を終えて


少し(…大分)時間が空いてしまいましたが、6月23日・24日に実施しましたタイル工場見学会のレポート、間もなく完成です。11月2日(金)の第二回勉強会の参加者に配布の後、本blogにupしたいと思います。ご期待下さい。

以下MATECO代表田村・加藤の見学会を終えて、のテキストを先に掲載させて頂きます。
ぜひご高覧の上、2日の勉強会に向け想像を膨らませて頂きたく思います。

10月29日(月)現在、定員までまだ若干余裕があります。参加者は建築・土木デザイン・ランドスケープデザイン・ハウスメーカー・工務店・学生…と、様々な分野の方々です。素材と色彩はまちや空間を繋ぐ要素である、をモットーとするMATECOらしい勉強会になりそうです。
どうぞ宜しくお願い致します。→お申し込みはコチラ


●「選ぶ」から「つくる」へ
事務所の中には一体どれだけの数の「カタログ」が常備されているだろう。

設計の過程で素材を選ぶ時、ほとんどの場合、まず始めにすることは「本棚に並んだカタログの中から目当てのメーカーさんのものを引っ張り出し、ページをめくるか、またはもっと手っ取り早く、カタログさえ開かずインターネットでメーカーさんのサイトへ行き、例えば「用途別」「コスト別」検索をしてイメージや条件に合いそうなものを選び、サンプルを取り寄せる」、という行為から始まります。

事実、私自身もそうすることがあります。それでもカタログの場合はページをめくる間に、目当てのもの以外にも目が留まり、「こんなものがあるんだ」と発見するチャンスもありますが、ネット検索の場合はあまりにも直接的に諸条件にあったものが限定表示されるために、「発見する」機会さえありません。いつの間にかそんなシステムにすっかり慣れてしまって、「決める」という行為のほとんどが「選ぶ」に置き換えられてしまっているように感じることがあります。

焼きもの素材であるレンガやタイルの場合は、カタログには掲載され尽くせない数多くの選択肢があります。
事実、実際に工場に足を運んでみるとどうでしょう?そこにはカタログには掲載されていない形状、テクスチャー、色合いのものがたくさん溢れています。

本来、「ものづくり」とは、求める者と求められる者との間でイメージを共有し、アイディアや技術を出し合うことによって実現される行為です。そのためには互いに相手の言葉を理解し、最良のものを生み出す努力が必要であり、そうした過程を経て初めて設計者やデザイナーは最良の素材を選定することができ、工場は新たな素材を生み出すことができます。また、そこで得た経験と発見がお互いの財産となるのです。

その行為こそが設計者・デザイナーと産地との真のコラボレーションであり、コラボレーションの原点とは、「選ぶ」から「つくる」に返ることにあるのではないでしょうか。
                   
        マテリアルディレクター・田村 柚香里



●探究心が切開く未来
MATECO設立に向けて今年1月にしたためた企画書には、主な活動内容を

1.学生・ディベロッパー・建築設計事務所・行政景観担当等を対象としたセミナーの開催(年2~4回)
2.工場見学ツアーの開催(年1回~2回) ※まずはタイル。平成24年6月頃に実施したい。
3.素材・色彩に的を絞った設計者・デザイナーへのインタビュー(年4回~6回)→Blogで公開。
と記載しました。

昨年夏に田村さんと出逢った当初から、『この方の案内で工場見学が出来たらどんなに素晴らしいだろう』とずっと考えていた企画が今回現実のものとなり、多くの若い世代にタイルの魅力を“体験”してもらうことが出来たのではないかと思っています。
タイルという素材は加工品ですが、どんなに工場が機械化されても省くことの出来ない、人の目や手を必要とする工程があります。そうした判断・行為は製品カタログには記載されていませんし、メーカーの営業の方もいちいち説明はしてくれません。ともするとカタログは設計において単にスペックを検討するための道具として使われている例も少なくありません。

素材を知るために何より必要なのは、その成り立ちを理解することである、と考えています。そこには産地の歴史と現代が抱える課題、決して明るいとは言えない時代の中でなお、地域の産業を守るために既製の枠組みを超え力を合わせる次世代の奮闘・活躍など、圧倒的にリアルな現実がありました。

今回、参加者は実務経験が皆無・もしくは乏しい学生~20代が中心であり、正直、製品毎の特徴や専門的な技術を理解できるか等、少しの不安がありました。が、生産の現場を目にした彼ら・彼女らの目の輝き、次々と質問を繰り出し熱心に工場の方々と話をし写真を撮る様子を見、こうした物事に対する探究心こそが未知の・よりよい環境の創造の原動力であり、それを支える産業の力が不可欠であることを強く感じました。工場の様子をインドのスタジオ・ムンバイに例える人が多くいたことにも、これからの環境・空間づくりの大きなヒントがあるような気がしています。

最後になりますが、共同組合ケーエスジーの谷口様を初め、ご尽力頂きました各工場の皆様方には心よりお礼を申し上げると共に、近い将来、見学会参加者と産地の方々がタイルという素材を介し創造の場で出逢えることを心から願います。そして自身もまた、愛着のあるタイルという素材と末永く向き合っていきたいと思います。
ご協力頂きました皆様、本当にありがとうございました。

色彩計画家・加藤幸枝

2012年10月11日木曜日

第二回勉強会 参加募集のお知らせ



素材色彩研究会MATECOの第二回勉強会はタイルがテーマです。

2012623日・24日に実施しました多治見でのタイル工場見学レポートを元に、生産地の現況や施工についてのお話をマテリアルディレクター・田村柚香里氏(MATECO代表)、不二窯業株式会社常務取締役・清水真人氏、工事部長・田中信之氏に案内頂きます。不二窯業株式会社は設計部を有する施工会社であり、建築・土木の両分野において歴史と様々な実績を持つ会社です。

さらに建築家の蘆田暢人氏をゲストにお招きし、これまでに手掛けられた作品の選定~決定に至るプロセスやタイルという素材の特徴や魅力について、ご紹介頂きます。

タ イルという素材は現在、精巧な色管理や寸法精度等の要求に応えることができ、優れた性能を誇れる建材である一方、原料の成分や焼成する際の温度、気候等に 大きく影響され、時に意のままにならない素材でもあります。素材を選ぶ、そしてその素材が空間や環境にどのような効果をもたらすのか。

魅力ある素材を生かすために必要な知識や技術を設計・生産・施工それぞれの立場から紐解くことで、MATECOの重要なテーマの一つである「決定の論理」を、より丁寧に考えていきたいと思います。
タイルという素材にご興味のあります方、あるいは素材の成り立ちにご興味のあります方、是非ご参加下さい。

2012年6月23日・24日に実施したタイル工場見学会の様子もご紹介します。
タイルをハツる作業、参加者も体験してきました。

●テーマ 『素材が立ち上がるまで-日本のタイル 生産・設計・施工の現場から』
●プログラム
・タイルとは?-タイル工場見学報告(見学会参加者有志より) 15
・タイルの施工技術について-明治から現在まで
        (仮題・田村柚香里氏+清水真人氏+田中信之氏) 45
・設計の現場から-タイルという素材(仮題・蘆田暢人氏)     45
・質疑応答(全体でディスカッション)                                    45
・ゲストプロフィール
 不二窯業株式会社 http://www.fujiyogyo.co.jp/
 蘆田暢人氏(蘆田暢人建築設計事務所代表, ENERGY MEET共同主宰)
 
●日時:2012112日(金) 18302100 
●参加費:500円(会場費・お茶代)
●定員:30
●場所:幸伸ビル GROUNDSCAPE KNOT 【文京区本郷6-16-3 地下1階】
●連絡先(事前):加藤幸枝/ykatoykato(アットマーク)gmail.com
●連絡先(当日):お申込みの際、ご連絡します。
●申し込み:100mateco(アットマーク)gmail.com 宛に、
 氏名・年齢・連絡先・所属(学生の方は学部・学科も)をご記入の上、メールにてお申し込み下さい。

2012.10.10
MATECO代表・加藤幸枝/田村柚香里



2012年8月1日水曜日

MATECOレポート 【素材と色彩のTA‐MATECO箱(後編)】

MATECOレポート第十二弾は、TA-MATECO箱の後編です。

421日に開催致しました『十人素色-決定の論理-』では、ご登壇いただいた10組のレクチャラーの皆さんに素材と色彩をご持参頂きました。

展示の方法を考えた結果、小さな桐の箱を用意し、その中にこれまでに手がけられたプロジェクトやご自身の専門分野に欠かせない『素材と色彩』を詰めて頂くこととしました。
 
た・まてこ・はこ玉手小箱、といささかダジャレ混じりではありますが、大真面目に、素材と色彩の多様な魅力を伝えたい、そして様々な決定の方法論・論理を視覚的な情報として ストックしていきたい、という思いから生み出された展示の方法であり、あえて箱に共通のモジュールを用いることにより、中身を一層際立たせることができる のでは、と考えました。

当日会場では多くの方が手に取られていました。素材と色彩のリアルさ、そして豊かさを体感して頂ける展示になったと思います。
以下、各レクチャラーの方々のレポートと同様、ご登壇頂いた順に後半5組の方のMATECO箱をご紹介します。

前半5組の方のTA-MATECOも是非併せてご覧下さい。 


北川一成 / ISSAY KITAGAWA
例えば、いろんな紙に、同じ色のインキを同じ条件で印刷していきますと、
同じ白色に見える白い紙でも、紙の種類が異なれば色は全部違ってきます。
そして、その色は、置かれる環境や時間の経過によって変化していきます。
表したい色を追求するには常にこれらを考慮しておかなければなりません。
そういうことを頭で解っていても実際の現場で判断できなければダメです。
これは経験とその数により、ますます実感し、培われていくものでしょう。
→北川氏のレクチャーの様子はこちら



■流麻二果 / MANIKA NAGARE  屑玉手
絵描きである私から生まれる色はいつも絵具から放たれる。
光を得て作品となる。
そしてアトリエにはその屑が残る。
屑もまた鮮やかに物語る。
→流氏のレクチャーの様子はこちら 



■403architecture〔dajiba〕 素材の箱
桐の箱の表面を削り、その木くずを元の箱に入れている。
箱を構成する板の厚みは薄く滑らかになり、
薄くなった分の細かな桐の粉を箱の内部に移動させた。
桐の箱に内在していた素材の可能性を用いることで、
箱そのものと箱の中身を同時に制作している。
→403architecture〔dajiba〕のレクチャーの様子はこちら 



■熊谷玄 / GEN KUMAGAI
この箱に詰め込んだのは、3年前ぼくが独立してから頂いた
仕事の現場を収めた現場写真の数々です。
仕事の依頼が来ると、まず現場に出かけます。
そこは、開発されたまっさらな更地だったり、役目を終えて建て替えられる建物だったり、営業を続けているショッピングセンターだったり、砂漠だったり、森だったりしますが、そこにある空気とか太陽とかそういったものが、その場の色を生み出していて、それは何というか計画の前提のようなものとして常に意識するようになります。こうしてこれまで取り溜めた現場写真を改めて並べてみると何か見える気がして今回、この箱に詰めてみました。
仕事を通して様々な場所を訪れその場所の色を記憶する。
その蓄積が僕の色を作っているのかもしれません。
→熊谷氏のレクチャーの様子はこちら 



■川添善行 / YOSHIYUKI KAWAZOE
コクタン/サクラ/カツラ/ホオ/
アクリル/アルミニウム/スズ/カシ/チーク
(この3センチ角のキューブは川添氏のデスクに置かれているものなのだそうです。)
→川添氏のレクチャーの様子はこちら


如何でしたでしょうか。
分野は違えど、決定という行為における論理を裏付けとなり得る、素材と色彩の数々。
どうか改めてレクチャーのレポートと併せて、ご堪能下さい。

今回、ご登壇者の方々に制作していただいたTA-MATECO箱は事務局にて大切に保管してあります。来年の十人素色の際には新たな箱と共に展示させて頂きたいと考えています。順調に行けば、10年後には100個の箱が集まることになります。
そうした時間の経過が、箱に、そして中身にどのような影響を与えるのか…。単に物理的な意味だけでなく、色褪せない素材と色彩とは?あるいは、時代を彩る素材・色彩。
時間がつくる・育てる、という観点も、MATECOの重要なテーマです。