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2012年6月29日金曜日

MATECOレポート 【素材と色彩のTA‐MATECO箱】

4月21日に開催致しました『十人素色-決定の論理-』では、ご登壇いただいた10組のレクチャラーの皆さんに素材と色彩をご持参頂きました。

展示の方法を考えた結果、小さな桐の箱を用意し、その中にこれまでに手がけられたプロジェクトやご自身の専門分野に欠かせない『素材と色彩』を詰めて頂くこととしました。

た・まてこ・はこ→玉手小箱、といささかダジャレ混じりではありますが、大真面目に、素材と色彩の多様な魅力を伝えたい、そして様々な決定の方法論・論理を視覚的な情報として ストックしていきたい、という思いから生み出された展示の方法であり、あえて箱に共通のモジュールを用いることにより、中身を一層際立たせることができる のでは、と考えました。

当日会場では多くの方が手に取られていました。素材と色彩のリアルさ、そして豊かさを体感して頂ける展示になったと思います。
以下、レポートと同様、ご登壇頂いた順に前半5組の方のMATECO箱をご紹介します。


岡安泉 / IZUMI OKAYASU
照明の主流がLEDに変わりつつあります。
それは組み合わせる素材の自由度が高まったことでもあります。
アクリルだったり、布だったり、紙だったり。光の制御もレンズによって容易なものになりました。
照明の環境は、これから大きく変動します。
→岡安氏のレクチャーの様子はこちら




八島紀明 / TOSHIAKI YASHIMA
サイン計画の大きな特徴は、ミリ単位の文字から10 数メートル単位に至る、大小の色彩や素材、文字を扱うことにあります。また、建築建材から紙媒体、デジタル媒体に至るまで、多種多様な素材や媒体を用い、それらのことに知悉・精通していることが求められます。
近年では防火対策や経済状況の問題もあり、人工的な建材を用いることを要求されることが多くなりました。
箱の中身を見ていただくとその傾向が理解いただけると思います。
→八島氏のレクチャーの様子はこちら



崎谷浩一郎 / KOICHIRO SAKITANI 
『解は現場にある』 ※解と貝、が“かかって”います
→崎谷氏のレクチャーの様子はこちら



田村柚香里 / YUKARI TAMURA
素材と素材をつなぐ欠かせない「名脇役」
MATECO箱に何をつめようか
「せっ器」「磁器」 「施釉」「無釉」
「好きな色」「お気に入りのテクスチャー」
「原料」「試作段階のテストピース」
あれでもない、これでもない・・・
たくさんのモノの中から絞り込んで、最後に残った大事なモノ
ぴったり決まると心地いい
 素材と素材をつなぐ「目地」
→田村氏のレクチャーの様子はこちら



小川重雄 / SHIGEO OGAWA
和歌浦アートキューブ(下吹越武人さん設計)のガラス
ファサードの内側には、銅板で被覆された可動ルーバーがある。
ジグザグに設置されたガラスには周辺の松林が映り込み、銅板と不思議なレイヤーを形成する。
その状況を捉えた写真を万華鏡のように設え、遊んでみようと思った。
銅板、ガラス、松林、青空、白い雲。最後のレイヤーは実体であるアクリルキューブ。
この桐箱の中で自由に動かして楽しんでほしい。
→小川氏のレクチャーの様子はこちら




いかがでしたでしょうか。
決定の論理を裏付けるような、素材と色彩の数々。どうか改めてレクチャーのレポートと併せて、ご堪能下さい。

引き続き、後半5組の方のレポートを順次公開していきます。どうぞお楽しみに。

2012年6月8日金曜日

MATECOレポート 【十人素色-決定の論理 その2】

MATECOレポート第二弾は、『十人素色-決定の論理-』にご登壇頂いたサインデザインの八島紀明氏のレクチャーについて、です。
誘導・案内という機能を持つサイン計画が、環境や空間に対しいかに細やかな配慮を必要とする仕事であるか、たくさんの事例を交えご紹介いただきました。

レポートその1と併せて、ご高覧頂ければ幸いです。


Vol.02 「サインデザインの決定の論理」 八島デザイン事務所 八島紀明氏

「十人素色‐決定の論理」は多分野の方からのお話しがとてもいい刺激になりましたが、いくぶん刺激が強すぎて消化するのに時間がかかってしまいました。
八島さんは論理的にデザインの仕事をする方で、プレゼンテーションからもその姿勢が伺えました。
冒頭でサイン計画とは・情報とは、を再定義し、そのロジックの上にサインデザインという仕事を構築なさっているようでした。
また同じく冒頭での「花がなぜ目立つのかというのは、花びらの造形と色彩のみならず、背景のグリーンとの関係性によって花びらが風景の中から立ち上がるから」という説明がとても印象に残っています。

仕事の上で、デザイナーが完成させるのは形ある「モノ」だけれど、本質的に大切なのは「モノ」と「モノ」との関係性なのだな、と思いました。

後のお話で、その土地に内在する風景色を引用しサイン計画を検討した例は、図と地のバランスの中で色がとても印象的に整えられていました。
それは沖縄のプロジェクトだったのですが、その場において主役になる色が別のところにあるとき、意図的に背景になるようなカラーリングを考える等、周辺環境との関係性を踏まえたデザインの工夫がなされていました。
一部には琉球ガラスを用いたサインが展開され、その土地の歴史と文化を汲むことにより、モノとしてのデザインを離れ、沖縄という土地とデザインとが互いに共鳴しているように感じられました。

モノだけではなく関係性が大事、というのはサイン計画のみならず、建築、プロダクト、平面上のデザインなど多岐において通ずる話だと思います。

例えば、人がまちを歩いているとき、たった1つの建物だけでそのまちの印象が決まるのではありません。そうではなくて、建物同士がつくるまち並み、街路樹、人の声、果ては天気や自分の身体感覚などに影響され、その人の、そのまちに対する印象が決まります。

なにかをデザインする時は、自分の専門領域にだけ目が行きがちですが、デザインを受け取る側の人からすれば、○○デザイン、□□デザイン、というような世界の分断の仕方をしておらず、むしろそれらが織りなす複雑な関係性を知覚しているのだな、と思います。

また、モノとモノとの良好な関係性を構築する上で、色彩が重要な要素の1つになるのではないか、と感じました。
デザインが完成して、それでデザイナーの仕事が完了するわけではなく、そのあとも残り続ける「モノ」のことを考え、見届け続けることも建築家やデザイナーの責任なのだとも思いました。



●レクチャラープロフィール
八島紀明 / TOSHIAKI YASHIMA
1970 三重県鈴鹿市生まれ
1994 法政大学法学部法律学科卒
1995 - 1996 ホテルインターコンチネンタル東京ベイ フロントマン
1996 - 1998 菜々六工房
1998 - 2000 株式会社 びこう社
2000 - 2001 株式会社 イリア
2002 - 2009 有限会社 井原 理安デザイン事務所
2009 株式会社 八島デザイン事務所設立
ソニー本社ビル(ソニーシティ)サイン計画 (SDA賞 入選)/東京ミッドタウン サイン計画 (SDA賞 入選)等、受賞歴多数。
 
●レポート執筆担当
藤原由智 / YOSHITOMO FUJIWARA
武蔵野美術大学造形学部 基礎デザイン学科三年。
考えるのもつくるのも好きです。
最近は「風土性/土地性、とデザイン」をキーワードにいろいろ考えています。
「日本的なデザインとは」「土地固有の文化とは」など。
大学の先生の指導のもと、茨城県笠間市のデザインプロジェクトに参加しています。